誰も知らない『アウトレイジ』シリーズの世界
「てめえナメてんのかコノヤロー!」
「てめぇらガタガタうるせぇんだよバカ野郎!」
こんな知的なやり取りが2時間ずっとつづく、まさにエレガントなひとときを満喫できる上流階級の映画体験。
このシリーズが傑作であることは言うまでもないですけど、やっぱ「傑作!」と言わずにはいられないほど超傑作なので言わせてください。
超傑作です!
ヤクザ映画ではなく、ヤクザファンタジー
昔、某シネコンで働いているとき、なにかの罰ゲームか知らないですが『首領への道』というヤクザ映画を上映したことがありました。
で、もう来る客がみんなそっち関係の人ばっかりで生きた心地がしなかったのを思い出します。
劇場内で平気でタバコ吸っちゃったりする。
もちろん俺たち劇場側は、毅然とした態度でそんなの見て見ぬフリするわけですが。
何が言いたいのかというと、この『首領への道』も『アウトレイジ』そうだけど、ヤクザ映画の魅力って、アクションやバイオレンス演出だけじゃなくて、「ヤクザ」という特殊な世界の様々なシキタリや儀式などの世界観とか様式美とかにあるわけです。
で、その中でも 『アウトレイジ』シリーズは本当に世界観がファンタジック。
とにかく一般人がひとりも出てこない。
ヤクザだけが住む「ヤクザ世界」で、ヤクザ同士がモメまくって、みんな揃って「てめえナメてんのかコノヤロー!」ってスゴんでいるだけの映画。
『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』と一緒です。
キャラクターがヤクザなだけ。
そんな架空のキャラのみなさんが、始終本気で殺し合いをしています。
もう卑怯もひったくれもない感じで、闇討ちとか暗殺とか騙し合いの連続。
正々堂々なんて意識が皆無な、まさに純粋な「悪」な人たちばっかりで感情移入が一切できません。
つまり俺たちよりもずっと純粋な人たちなんです。
「普段やさしいけどキレると怖い」なんて人はひとりもいない。
ずっと怖いし、ぶっとばし合ってるという。
もちろんそんな奴は、ハタ迷惑極まりないんだけど、見ていてとってもスカっとするのも事実なんですよね。
シリーズを重ねるごとにメルヘン度がエスカレート
『アウトレイジ』は3部作ですが、シリーズを重ねるごとにファンタジーっぷりがアップしています。
まず、1作目のラストで死んだはずのビートたけし演じる「大友」が、2作目『アウトレイジ ビヨンド』で生き返っています。
ほら。もういきなりメルヘンじゃん。
で、3作目の『アウトレイジ 最終章』では、韓国の大物フィクサー役を、ビートたけしの友人のただの一般人が演じてたりしてこれまたファンタジー。
シリーズ通して、凄惨な殺し合いをしつつも、ところどころでユニークなズッコケが入ったり、殺伐とした中にもホノボノとしたワンシーンがあったりと、とにかく演出がどこか異世界の出来事のような雰囲気を醸し出しているところも注目。
死人は前作の倍、緊張感は前作の倍、出演者の顔の面白さも前作の倍、飛び交う怒号は前作の1億倍と、何もかもがバイバイゲームでエスカレートしていく極上のエンタテインメント。
ヤクザ映画が好きじゃないという人でも、ぜったいに楽しめるエンターテインメントになっていますので、みなさんもぜひ、ヤクザ同士の罵り合いから生み出されるグルーヴに身をゆだねてみてくださいね。
ではでは。