CGだと思ってたらストップモーションアニメだった『犬ヶ島』がとんでもなくヤバい!
いや、本当にすみません。
前情報とか知らずに鑑賞してしまいまして、最初はCGだと思って観てたんですこの映画。
ずいぶんと面白い動きするキャラクターだなあなんて、素直にその「ぎこちなさ」を単なる世界観だと思って楽しんでいたんですが、映画が進むにしたがって、あれ? これもしかして人形じゃね? ってなりまして。
上映後にプレスを見てはじめてストップモーションアニメだと知ったという。
俺、遅ッ!
でもね、マジで凄いですこの作品。
ストップモーションアニメだから凄いというんじゃなくて、この見たことも無い世界観というか、感じたことのない空気感というか、スクリーンから伝わるブッ飛んだパワーというか、こんな刺激的なビジュアルはなかなかお目にかかれないってくらいの怪作っすよ!
なんだこの誰も見たことのない世界観はッ!
『犬ヶ島』はその名の通り、犬だらけの離れ小島のお話です。
人間が犬を厄介者として社会から追い出して、すべての犬たちがゴミの島に追いやられたわけですが、そのストーリーの流れもとんでもなくヤバい。
舞台が近未来の日本で、外国がイメージする日本の極端なオリエンタル感が具現化されたようなカオスなヴィジュアル。
そんな中で、怪しげな日本語が飛び交い、よくわからない理由で犬たちを迫害する国家権力。
ストーリーがもう意味わからないし、ファンタジーにも程があるというか、とにかくナレーションなんかで無理やり納得させられる感じの意味不明さなんですが、そのへんは映し出されているヴィジュアルが凄すぎてどーでもよくなるので大丈夫です。
で、可哀想な犬たちがゴミ島で過酷なサバイバルをするような状況になっているわけですが、そこに現れたのが、愛犬を探しに来た一人の男の子、小林アタリくん。
このアタリくんが、ゴミ島の薄汚い病気犬たちの協力のもと、愛犬を探す旅をするという話です。
いやもうこの映画はね、ストーリーとか説明しても意味が無い。
ヴィジュアルの凄さをぜひ堪能して欲しいです。
世界観のブットビ度がハンパないです。
オープニング開始0.1秒から「なななななんじゃこりゃ!」と度肝を抜くこと必至のとんでもない映像です。
ひとことで言うと、超絶クール!
そう、ストップモーションアニメということは、キャラクターがすべて人形。
つまり感情表現が最低限に抑えられており、キャラの動きも最低限であるところが、逆にとんでもなくクールなんです。
最近のクオリティの高すぎるCGアニメによる、細かい動きや表情なんかに慣れていた人間にとって、このシンプルな表現は刺激物以外の何物でもありません。
しかし、物語はアクションとサスペンス、アツい勇気と友情が描かれており、その温度差がまたクールでたまらない。
人形だからこその制限が、逆に表現の広がりになっていて、鑑賞している側の想像力と好奇心をガンガン刺激してきます。
間違いなく、この世の誰も見たことのない世界観だし、きっともう一度観たくなるようなクセになる刺激になりますよ。
情熱と狂気が生み出した圧倒的芸術
100分の映画を作るのに、140000もの静止画が撮られ、それらすべてのファイルの合計データは34TB。
作られた人形の数1097体、うち犬は500匹。
撮影のセットは240も作られ、最大のセットでもたった長さ9m。
などという「どう? 凄いでしょ? 」と言いたげな製作ネタがあり、公式HPではメイキングシーンも公開されています。
俺は基本的に、ハイテク技術や撮影方法、かかった制作費なんかを自慢する映画宣伝が大嫌いで、お前らの苦労なんか知らねーよと。
映画は完成品がすべてで、制作の苦労が面白さに繋がるわけでもねーし。
「CG一切使ってません!」なんて言われても、作品が凡作だったら「CG使ってでも面白い映画作れや」って思うじゃん。
でも今回は、その苦労というか手間ひまがあってこその素晴らしい出来になっているのでそれだけは言わせて。
『犬ヶ島』は、製作陣のキチガイじみたこだわりが生み出した最高峰の芸術です。
頭がおかしくないと作れないし、ひとつひとつのシーンに、努力と情熱(あと狂気)なくして到達できない圧倒的なパワーがあります。
監督のウェス・アンダーソンさんは、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ムーンライズ・キングダム』、『グランド・ブダペスト・ホテル』など、イッちゃってる作品ばかり撮っている印象が強いですが、やっぱりどこかイッちゃっています。
以前にもストップモーション・アニメ『ファンタスティック Mr. FOX』を製作していますが、結局のところこの人はストップモーションアニメを作るために監督やってんのかもね。
まとめ
ビジュアルと世界観の話ばかりでしたが、セリフも超絶カッコよくてユーモア抜群なのでそこも痺れます。
しかも声を演じているのはリーブ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ビル・マーレイといったベテラン俳優ばかりなので迫力が凄い(姿は犬だけど)
今世紀最高にクールな芸術的体験ができること間違いなしの傑作。
ぜひぜひ映画館で観て!
俺はもう一回観に行くから!