デヴォン式ローデッドクラッチ

映画ファン最後の良心「デヴォン山岡」が映画を楽しみまくって感想を書きます。

絶対にひとりで観て! 別次元の「異様さ」にたどり着いたリメイク版『サスペリア』

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俺はいま、聴くだけでド派手に呪われそうな初代『サスペリア』(1977年)のテーマ曲を流しながらこの感想文を書いている。

音楽を担当したイタリアのバンド「ゴブリン」の代表曲のひとつであり、ホラー映画BGMの中でも『エクソシスト』のテーマ「チューブラー・ベルズ」に並ぶ超有名なサウンド

その美しく儚げなメロディと民族楽器の音色との不気味な融合、時折挿入される魔女のささやき(みたいなダミ声)がとんでもなく恐ろしい。

 

ダリオ・アルジェント監督の名を一躍有名にしたホラーの古典『サスペリア』は、俺にとって怖い映画というよりも、なんつーか、その、とても狂っている変な映画というイメージだ。

音楽も、ビジュアルも、物語も、展開も、ことごとく常識ハズレで変態なので、思春期に観た俺にとってはけっこうなトラウマ。。。

というか、この作品を運悪く多感な時期に観た人間なんてのは、もう間違いなく俺同様にトラウマを植え付けられているはず。

 

今回リメイク版を監督したルカ・グァダニーノさんもまさにその一人であった可能性が高い。

少年時代(13歳の頃だったそう)にこの映画を見た瞬間に、彼は「ぼくも大きくなったらサスペリアを撮りたい!」などと言いながら、この作品の再映画化を夢見るという完全にヤバイ青春を送っていたんだって。

 

サスペリア』は「とんでもなく変な映画」ゆえに公開時のインパクトも大きく、今なおカルト的な人気を得ている。

 

ファンも当然観る目が肥えているので、ちょっとやそっとのリメイクじゃあ納得しないのは明らかだし、そもそもすでにあの時点で完成されていたダリオ・アルジェント監督の変な美的センスやら変なショック描写やら変なミステリー展開やらを模倣しようにも、そんなものは到底無理である。

 

『ゾンビ』(リメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』)や『悪魔のいけにえ』(リメイク『テキサス・チェーンソー』)のように容易にリメイクできるような作品ではないのだ。

そんな、どう考えてもリメイクが難しい作品にあえて手を出したルカ・グァダニーノなる男はタダモノではない。


俺なんかも「普通の映画になっちゃってたら残念だなあ」なんて思いながら鑑賞。

そう、結局いちばんの不安は「普通のホラーになってしまっていること」なのだ。

 

「圧倒的な変さ」こそが『サスペリア』の大きな魅力ゆえに、リメイク版でそこを修正されて正統派ホラー化されてしまうとファンとしてはマジで困ってしまう。

 

で、結論なんだけど、リメイク版の『サスペリア』は、なんと驚くべきことにダリオ・アルジェント監督とはまた別ベクトルでとんでもなく変な映画だった。

いや、もはや「変」というレベルではなく、オリジナルの100倍「異様」で狂気に満ちた壮絶ホラーになっていたのだ。

 

 

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驚きの再構築で狂気度UP! 地獄度UP!

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リメイクではなく「再構築」と言ったほうがしっくりくるくらい、本来の『サスペリア』のベースの部分だけを残して、あとはまったく別の世界観となっている本作。

 

印象としては、オリジナルに比べて美しさ100倍、狂気100倍、残酷さ100倍、おぞましさ100倍、つまり、すべてが地獄方向にパワーアップしているという驚きの出来で当然満足度も100倍なのだ。

 

オリジナル同様に、主人公がダンサーになるという夢と希望を胸に有名舞踏団の門を叩くところから始まるが、そこからの展開がエグさと生々しさに満ちていて、とにかく不気味。

美女だらけのダンサーたち、エロチックなダンスレッスン、得体のしれない邪悪な存在の鼓動、講師たちの謎の行動。

主人公以外の登場人物たちにもクローズアップしながら、さまざまな視点から『サスペリア』の物語を展開させ、ときにその描写はキャラクターの精神的なイメージにまで及ぶ。

一歩間違えると実験的なアート作品になってしまいそうなギリギリの不条理さ&幻想的な演出が、まるでデヴィッド・リンチの作品のようでもあるが、しかし根底にはオリジナル版へのリスペクトがしっかりと見て取れるから凄い。

 

姿カタチがまるで違うのに、それは間違いなく『サスペリア』でしかないのだ。

 

ルカ・グァダニーノ監督、よくもこんなとんでもないリメイクを創り上げたものだ。

サスペリア』と言う作品を、どれだけ愛し、分析し、研究すればこんな完璧な再構築が可能なのか?

なんと上映時間は152分という長尺でありながら、この濃密さ、絵的な美しさ、物語の面白さはタダゴトではない。

 

 

完璧すぎるキャストと音楽がとにかく凄い

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主人公スージーを演じるのはダコタ・ジョンソン嬢。

成人映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で惜しげもなくセレブセックスを見せつけていたあの少女なので、今回も愛しさとエロさと心強さ満点の見事なパフォーマンスを魅せる。

 

さらに、舞踏団のカリスマ指導者マダム・ブラン役は、俺の中で「ガチの魔女なんじゃないか?」という疑いが年々強くなっているティルダ・スウィントンである。

 

もうこの時点で美的センスが爆発しているわけだが、そんな危険なキャラクターたちの物語を盛り上げる音楽がこれまた凄い。

オリジナル版でも重要な役割を担っていたゴブリンのプログレッシブ・ロックに負けず劣らずのインパクトで鳴り響くのは、あの『レディオヘッド』のトム・ヨークによる楽曲である。

ポップでありながら破壊的な迫力と官能的な魅力を併せ持った美しきロックの調べが、新たな時代の『サスペリア』に華を添える。

 

この完璧な布陣でこそ実現した、もっとも高級&高尚なリメイク作品。

 

「決してひとりでは見ないでください」?

 

いや、『サスペリア』の濃密すぎる映像体験は、絶対にひとりで観て、その心に誰とも共有できない禁断のトラウマを植え付けられて欲しいな。