ローデッド式デヴォンクラッチ

映画ファン最後の良心デヴォン山岡が映画を楽しみまくって感想を書きます。

シアーシャ・ローナンちゃんのほとばしる思春期パワー! 『レディ・バード』は現代の『赤毛のアン』だ

 

冴えない地元なんか出て、早く都会で文化的な生活をしたい!

 

都会への進学を夢見る少女レディ・バードの、破天荒で切ない高校最後の1年を描いた青春映画の最高峰。

切ない恋、背伸びした友人関係、うんざりする母親の小言と退屈な日常、そんな儚くて危うい青春時代を、根性と持ち前のユーモアで乗り切るレディ・バード

俺なんかはもう、主演のシアーシャ・ローナンちゃんの魅力にやられて100回キュン死しました。

きっと誰にでもある青春の一瞬の出来事なんだけど、儚くてキラキラしていて、人生が詰まっている感じ。

ああ、俺もこんな悩める少年で、両親たちはこんなに俺のことを心配してくれてたんだろうななんて。

最後には号泣必至の傑作であった。



現代のアン・シャーリーレディ・バードの魅力

 

「私はアン。名前のつづりの最後に「e」のついたアン(Anne)だから、そこんとこよろしく!」

 

そんなもんどーでもいいわ! と周囲に言わしめた赤毛のアンことアン・シャーリーのこだわり。

 

自分が他の人とは違う“特別な存在である証”として、名前のつづりにこだわったアン同様に、この作品の主人公クリスティンは周囲に自身のことを「レディ・バード」と呼ばせている。

 

しかし家族も含めなかなか呼んでくれないから、常にレディ・バードって呼んでっていってるでしょ!」とキレている。

 

監督のグレタ・ガーウィクさんいわく「自分で自分に新しい名前を付けることで、真のアイデンティティを見出すことに繋がる」とのことで、そのへんの感覚はすっごく良くわかる。わかりすぎる。

 

アン・シャーリーも、その孤独な身の上や過酷な日々を克服するうえで、名前の最後に入った一文字の「e」が大きな寄りどころになっていたはず。

 

その破天荒さ、ブレない意思の強さはレディ・バードに受け継がれているのだ。

 

 

レディ・バードにとって、クソ田舎のサクラメントでの暮らしなんか刺激不足でやってらんない。
しかも、平凡以下の家庭で育っていることへのコンプレックスもある。

都会へ行けば、親が金持ちなら、どんなに良かったか。

 

これも、赤毛のアンが自身の「赤毛」にコンプレックスを抱いているのととても似ている。

 

結局のところただの「無いものねだり」であり、サクラメントの田舎もアンの赤毛も、実は自分を形成しているとても大切な要素なんだけど、若いときはそれに気づかないというね。

 

いや、気づかなくていいんだよ。

 

青春ってそういうこと。

 

レディ・バードは外に飛び出すために、高校生活最後の一年を思いっきりフルスロットルで駆け抜ける。

恋をして、ケンカして、骨折して、失恋して、絶望して。

人の一生を見るかのような目まぐるしいレディ・バードの青春の日々。

 

みんな誰もが、こんな濃厚豚骨スープのような濃ゆい10代を経て、大人への階段を登っていくんだ。

 

すでに大人になってしまった俺にとって、レディ・バードの駆け抜けた青春は、楽しいこともトラブルも、すべての出来事がかけがえのない一瞬に見えて、とにかくラストで恥も外聞も無く泣いてしまったのだ。

 

 

そして母と娘の物語はつづく

 

レディ・バード』は母と娘の物語だ。

 

ティーンエイジャーの少女にとっての母親の存在とは、とても複雑な関係性なんだなとこの作品を観て思い知らされた。

このへん俺は男なので父親目線でしか見ることが出来ない。

でも、彼女たちを見ていると、両方の気持ちは手に取るようにわかる。

 

父親よりも近い存在でありながら、同性でお互い似ているからこそわかり合えない、対立してしまう関係でもある母親。

 

レディ・バードは母親とずっとケンカしている。

もう顔を合わせれば言い合いをしていて、母親は娘を理解しようとしないし、娘も母親の言うことに聞く耳を持たない。

そのやり取りがもどかしく、見ていて辛くもあるんだけど、しっかりと愛情があることは伝わる。

丁寧な脚本&演出だなと感心してしまうほど、2人の関係性が絶妙。

なんだろうこの優しい視点は。

女性監督ならではの、自身の経験に基づいたリアルで愛情に満ちた家族表現もこの作品の見どころである。



まとめ

個人的にシアーシャ・ローナンちゃんが大好きで、美しいんだけど、すごく等身大で、意思の強さみたいなのが容姿に漂っている感じがいいよね。

最近は健気で強い少女役が多いので、そんなイメージになっているだけかもしれないが。

でも『レディ・バード』はローナンちゃんの強さだけでなく、おバカでイタい一面も見れて、巧みなコメディエンヌぶりを堪能できちゃうので、まさに新たな魅力開拓って感じ。

青春映画でありながら思いっきりコメディでもある。でも最後にはしっかりと泣かせてくれる最高の映画だった。