常識なんか知るかバカ! 自由に暴れろ! 家族を大切にしろ! 『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』を観ろ!
『ワイルド・スピード』シリーズを観るといつも「映画ってこんなに自由でいいんだなあ」って思う。
常識とか、リアリズムとか、整合性とか、共感とか、細かい理屈とか、そんなものは映画に必要ないんだなと。
ドデカいスクリーンの中に、ド派手でド迫力でドスリル満点な映像さえ映っていればそれで良し。
他には何もいらない。というか、それ以外の要素なんか全部ムダでしかない。
たとえば恋愛、道徳、癒し、処女崇拝、平和へのメッセージ、環境破壊への警鐘、差別はやめましょうなどという問題提起、これらは映画においてまったくもってムダな要素である。
では、必要なモノだけで形成された、もっとも理想的でスマートな映画とは何か?
それはもちろん、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサム、つまり頭の中が脳みその代わりに筋肉と破壊衝動で埋め尽くされたハードコアバカの2人が世界を股にかけて大暴れする映画である。
これぞ映画の完成形&究極形態。
こんな映画を誰もが待っていた。
間違いない。
この映画を観たくない奴などこの世にいないと断言できるし、もし「俺は観たくない」なんて思っている人がいるなら深刻な心の病に侵されている可能性があるのでカウンセリングにでもかかるべきだ。
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』には、すべてが詰まっている。
殺人と破壊と美女と友情と家族とギャグとカーチェイスと細菌兵器と、盛りだくさんのバカ要素が奇跡の大結集。
まさに、この世のすべての“バカ”を集めた「バカの元気玉」(通称「元気バカ」)とも呼べる圧倒的低能ディープインパクトを映画館で体験しない手は無い。
日々の悩みや社会への不満、未来への不安、肉体疲労、精神障害、神経痛、肩こり、腰痛、ありとあらゆる症状が、この映画を観ることですべて解消されるのだ。
暑さの厳しい今年の夏だが、熱中症になんかなっている場合じゃない。
男なら冷房のガンガンきいた映画館でこの映画を観て、酸欠&過呼吸症候群になって救急車に運ばれるべきだ。
驚愕! 今世紀最強の2人による暴力的イチャイチャ
この映画の主役は人気作品『ワイルド・スピード』シリーズにおける脇役キャラの2人である。
ドウェイン・ジョンソン演じるルーク・ホブスは、ワイスピの主人公チームドミニクファミリーを一時期追っていた捜査官で、今では敵の凶悪な計画を阻止するために協力関係になっている。
ジェイソン・ステイサム演じるデッカード・ショウは、ワイスピ6作目『ユーロミッション』の適役オーウェン・ショウの兄で、ワイスピ7作目『スカイミッション』にて最強の敵として登場した人。
ワイスピ8作目『アイスブレイク』でもゲスト出演して、というかドミニクファミリー&ホブスと敵対しながらも軽く共闘しており、今回のスピンオフ製作の必然性を感じさせるほどのチームワークを見せている。
シリーズの中では、中心キャラのドミニクやブライアン以上に人気のキャラクターとなっているこの2人が、満を持してデコボココンビを組んでヤバすぎる悪と対峙する。
宿敵と組んで共通の敵を倒すというシチュエーションほどアツいものはない。
しかもアウトロー捜査官と大物犯罪者という、まったく正反対の強力な存在が手を組むことでその強さが何倍にもアップする感じ。
映画版DBでの孫悟空とベジータの共闘、『カリオストロの城』におけるルパンと銭形、頂上戦争で麦わらのルフィをサポートする元王下七武海サー・クロコダイル。
かつてお互いにとって厄介な相手だった者同士が嫌々組んでいるにもかかわらず、なぜか示し合わせたかのように息がぴったりでチームワーク抜群だったりする。
しかも立場は正反対なのに似たモノ同士で、「お前なんか信用してねえよ」みたいな顔をしながらも影ではお互いを信頼しまくっているというツンデレ感。
こうなると、2人が事あるごとにいちいち織り成す悪態やケンカも、すべてイチャイチャに見えてしまうから大変。
ムキムキのハゲおっさん同士のイチャイチャを見て興奮するおっさん。
これぞ実写版おっさんずラブ。
最近ドラマが話題になった『おっさんずラブ』は、ナヨナヨした粗チン男ばかりが登場し暴力シーンも殺人シーンも無くてまったくピンとこなかったが、ホブス&ショウのイチャイチャは、命がけすぎてノーマル趣味の俺でも思わず勃起してしまう官能ドラマであった。
根底に流れるワイスピスピリット
ドミニクファミリー不在の物語ゆえにスピンオフ作品という位置づけの本作だが、その根底にはしっかりとワイスピイズムが漂うのでシリーズのファンにはたまらないシーンの連続である。
もともとワイスピシリーズはキャラの描き方が非常に巧い。
というかバカと変態しか出てこない濃厚キャラの宝石箱とも言えるこのシリーズは、キャラの濃い奴が無条件でレギュラー化していくシステムなので、いまやファミリーにはバカと変態のるつぼと化している。
そんな中で一貫して描かれているのが家族愛だ。
バカで変態なドミニクファミリーのチームとしての結束力&家族然とした仲間意識の深さがシリーズの魅力なのだ。
今回の『スーパーコンボ』にも家族愛というワイスピリットがしっかりと描かれており、物語はショウの家族事情からはじまり、後半にはホブスの家族事情が描かれるという完璧な家族映画となっているところに注目だ。
仲間との友情、兄弟の絆、母親の愛情。
さんざんノーテンキな暴力と破壊を見せられているのに、ラストでほろりとしてしまうのがワイスピの凄いところ。
なんでも暴力で解決させるバカしか出てこないのに、なぜかみんな家族愛だけは底なしに深いのだ。
まとめ
『ワイルド・スピード』という邦題がそもそも超バカで低能だが、スピンオフとして付けられた『スーパーコンボ』というワードにも圧倒的な低能を感じる。
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』は、バカワードの組み合わせとしては完璧ではないだろうか。
あまりにもバカすぎて美しさすら漂っているので、もはや芸術である。
そんなアートの歴史的傑作、数十年後に孫に自慢するためにも、ぜひとも鑑賞するべきだ。