ローデッド式デヴォンクラッチ

映画ファン最後の良心デヴォン山岡が映画を楽しみまくって感想を書きます。

あえて台風シーズンに観たら怖さ100倍の『クロール -凶暴領域-』でワニさんの生態を学ぼう!

サメ、ワニ、ライオン、グリズリー、アナコンダ、怪獣、自らを頂点捕食者と勘違いした人間たちを、いともあっさりと食いちぎってゴックンしてしまう食物連鎖のトップを突っ走るみなさん。

そんな捕食者たちに襲われた俺たち人間にできることは、おとなしく彼らの腹の中で消化されることのみ。

この無力感が、文明社会での理性的な生活に疲弊した人間たちが深層心理で求めている密かな願望であり、それこそが俺たちが動物パニック映画を好む大きな理由に違いない。

 

巨大ワニさんに食われてみたいな

 

そんな俺たちの儚い望みを叶えるべく制作されたのが、この「民家に平然とドデカいワニがいて襲われる」という大胆かつクレイジーな設定のワニさん映画『クロール -凶暴領域-』なのであった。

 

まるで住宅地にワニさんがいるのは当然とばかりに、普通にいます。ワニさん。

「舞台となるフロリダ州は熱帯気候で水辺も多いからワニさんがそこらじゅうにいるんですよー」などという言い訳じみたアナウンスがあるものの、出てくるのは全長3mはあるかという巨大アリゲーターである。

そんなもんが、たとえ田舎町とはいえ人間の生活する住宅地に何匹も出没したら、お前そんなとこ土地も家も価値ダダ下がりだろうが。などと目くじらを立てるのは無粋である。

出ちゃったんだからしょうがない。

というわけで、主人公の女の子が入り込んだ元実家の床下でアリゲーターに遭遇して、さらにそのタイミングでカテゴリー5のデカすぎるハリケーンが来て、さらにそのタイミングで近所の河川が氾濫して大洪水が起こるという、呪われてるんじゃないかってほどムチャクチャな災難に合うのがこの映画。

ジャングルや水辺に行って襲われるのではなく、慣れ親しんだ家で襲われるという、日常の延長上に凶悪な捕食者の恐怖が訪れる展開が素晴らしい。

しかもハリケーンという大自然の脅威と共にワニさんがやってくるという畳みかけるスリルがたまらない、パニック映画好きにとって至れり尽くせりのアトラクションホラーとなっているのだ。

 


這いずるワニさん、泳ぐお嬢さん

 

とにかくCGで縦横無尽に大暴れするワニさんがヤバい。

地上で這いずりまわる姿もおぞましいが、洪水で屋内が浸水してから機動力の増したワニさんの動きの素早さはとんでもない恐怖である。

水中でスーパーサイヤ人化したワニさんの前では、身動きの遅くなる人間などただの動かぬエサである。

 

リアルに再現されたワニさんの必殺技 “デスロール” は、噛みついた獲物の身体を引きちぎるために、ガブリと咥えたままワニさんがぐるんぐるん回転するという鬼畜の所業。

そんなこんなで、パワーもスピードも殺傷能力もハイスペックなワニさんを相手に、主人公のか弱い女の子はどうサバイバルするのか?

なんとその女の子は、水泳の選手だった! というこれまた凄い展開。

 

タイトルである『クロール』の意味を紐解いてみると、その真意が明らかになる。

 

【crawl】

動詞:這う、腹這い
名詞:クロール泳法

 

 

なんと鮮やかなダブルミーニングではないか。

這いずるワニさんのクロールと水泳選手のクロールがかかっているというオシャレなタイトルの付け方は、さすがフランス人監督の面目躍如といったところ。

ワニ映画なのに、オシャレ感も出している欲張りなパニック映画なのだ。

 

 

 

設定が特殊すぎてキャラに共感などできん

 

パニック映画のセオリーに忠実な流れながら、お約束展開を意図的にハズすというテクニカルな離れ業も見せてくれるのは、監督がホラーに精通したアレクサンドル・アジャだからか、あるいはプロデューサーのサム・ライミのアイデアだろうか。

ホラーを見慣れたコアなファンの予想を裏切るようなシーンが多く、斬新かつ刺激的な展開で結末の予測がつかない。

 

とはいえ、これは純粋なるサバイバルホラーでもあるので、「そんな奴おるかい!」とツッコミ必至の主人公たちのバカすぎる行動も多い。

たとえば前半のワニさん襲撃時に、逃げる途中で主人公がスマホを落としてしまって、それを危険を冒してまで取りに戻るというシークエンス。

運よくワニさんに見つからずにスマホを回収することに成功するのだが、なんとその場でおもむろに電話しようとするのである。

俺なら急いで安全地帯に戻って、身の安全を確保してから電話をかけるが、主人公は何を思ったかワニさんがいつ戻ってくるかわからないその場に留まって電話をかけるのだ。

思わず俺は、映画館の周囲の観客など気にもせずに「うぉい!」と大声でツッコミを入れてしまったほどである。

早く助けを呼びたいのはわかるけど、もっと緊張感を持って行動して欲しいと思うのは俺だけだろうか。

とはいえ、俺は床下でワニに襲われるといった経験が無い身なので、「あなたにワニに襲われる緊張感の何がわかるんですか?」と言われれば返す言葉もないわけだが。


まとめ

ワニさんとハリケーンがダブルで襲ってくる災難に立ち向かうブッとびサバイバル。

間違いなくこの作品はワニ映画というジャンルの中で『クロコダイル・ダンディー』に次ぐ代表作になることは間違いないであろう。

いや『クロコダイル・ダンディー』はラブコメディだった。

都会育ちの美人新聞記者が、ジャングルの沼でむちゃくちゃエロい水着で水浴びしようとしてワニさんに犯されそうになるんだけど、それをクロコダイル・ダンディーが勃起しながら助けるという凄い映画だったなあ。

ワニ映画と言えば、俺の中では『U.M.A レイク・プラシッド』という作品がベストだが、これはコメディ寄りのパニックホラーなので、正統派サバイバルホラーとしての評価は『クロール』に軍配である。

つまりワニ映画最高峰!