最先端テクノロジーのチャッキーがぜんぜん可愛くない 『チャイルド・プレイ』最新作!
子どもたちに人気の可愛らしい「グッドガイ人形」にサイコキラー “チャッキー” の魂が乗り移って、前代未聞のお人形さんによる連続殺人が勃発。
というポップかつファンタジーな設定が話題を呼んだ名作ホラー『チャイルド・プレイ』は、我が国で言うとプリキュアのフィギュアが人殺しをするといった状況でしょうか。
「空に輝くキラキラ星! キュアスター!」が、文字通りキラキラのおめめと満面のスマイルで子どもたちを血祭りに上げて「キラやば~!」とか口走る姿はいろんな意味で超絶怖いです。
というかチャッキーの500倍怖いじゃん(東映、この映画を製作しろ)
『チャイルド・プレイ』シリーズは、殺人人形チャッキーのキャラ完成度の高さゆえいくつもの続編が製作され、いつの間にかチャッキーはセクシーな人形と結婚したり、子どもが出来たり(人形の!)、パロディ化されさまざまな場所でネタにされたりと、十分すぎるほど消費されまくっておりました。
そんなチャッキーも誕生から実に30年。
もはやホラー史の中でもかなりの古典となり、キャラクターとしての知名度も抜群な人気殺人鬼のチャッキーが、今年新たなヴァージョンとしてアップデートされたのです。
IoT時代のおもちゃ殺人は人間社会への警告
チャッキーもAIになる時代です。しかもスマホと同期してカメラ機能や自宅家電の操作などもできたりするハイテク使用。
掃除や室温調整、テレビの予約録画などなど、おもちゃなのに人間生活をラクにするためにクラウド化されているところが現代社会的で哀愁を感じてしまいます。
つまり、チャッキー人形も忙しくて人殺しばかりに専念している場合じゃないのです。
『トイ・ストーリー』のおもちゃたちが口走る「いつまでも子どもたちに遊んでもらいたい!」などと言うのはもはや“甘え”だ!
捨てられたくなかったら、その人工知能を隠さずに、大いに駆使して人間様の役に立て!
おもちゃ箱でじっと子どもを眺めているだけでなく、高性能カメラや音声&動画記録機能なんかを身に付けて、いつ降りかかるかもしれない脅威から子どもを守れ! おもちゃ! コノヤロウ!
いや、おもちゃにいろいろ求めすぎですよね。
まったくもって世知辛い世の中です。泣けてきました。
つまり何が言いたいのかというと、リブート版『チャイルド・プレイ』は、なにかと強制労働を強いられる劣悪なおもちゃ環境への怒りが、チャッキーを残虐な凶行へと走らせるという社会的な話なのです。嘘ですが。
いや半分本当。そのへんは観てもらえばわかると思います。
とにかく、今回のチャッキーは学習機能のあるAI搭載なので、どんどんヤバイことを覚えていき、殺しのスタイルも狡猾で知略的。
ただ刃物を振り回したりするのではなく、自身の能力であるクラウドサービスをフル活用した罠でターゲットを追い詰めて殺すさまが見事で、さすがIoT時代のハイテクチャッキーといったところ。
人間にとってのテクノロジーの進化は、反対に人間の首を絞める諸刃の剣になり得るという社会的メッセージをもこめられた物語となっていたのでした。
チャッキーを「悪」にするのもまた人間
「人工知能が人間との会話で物事を覚えていく」というシステムゆえに、チャッキーが引き取られた家庭環境がその成長に大きく影響を受けるというところも今作のポイントです。
アンディの家は、シングルマザーで経済的にも裕福と言えず安アパート暮らし。さらに母親の恋人がクズ野郎ときています。
子どもにとっては地獄みたいな環境に連れてこられたチャッキー人形が、悪意を植え付けられるのは必然。
そう。今作のチャッキーは、前シリーズのように「殺人鬼の魂が乗り移った人形」ではなく、多少プログラムがおかしくなっているものの純粋なAI人形なのです。
もともとチャッキーは「バディ人形」という、持ち主と親友になることをプログラムされたおもちゃゆえに、開花していく残虐性を周囲の関わりが助長させているというのがとても教訓的で恐ろしいのです。
そういう意味で、この映画の被害者はアンディであり、またチャッキーでもあると言えます。
ただのサイコな殺人人形ではなく、現代の家庭事情や人々の孤独から生まれる歪んだ心こそが、チャッキーの殺人の原動力となってしまったというのが、怖くもあり、哀しくもあり、おかしくもあるのです。
まとめ
今回のチャッキーは怖いです。顔が。
以前までのチャッキーは、もともとの「グッドガイ人形」自体がカワイイ顔で、それをあえて歪ませて悪い事をさせることでさらにキュートさがアップしていました。
しかし新しいチャッキーである「バディ人形」は、顔の造形もリニューアル。
最初からとんでもなく憎たらしく可愛げのない顔になっております。
正直、こんな顔の人形だれが買うんだ? って思うほど可愛くないので、上映開始1秒で出てくるその顔を観て大いに笑っていただきたいです。