ローデッド式デヴォンクラッチ

映画ファン最後の良心デヴォン山岡が映画を楽しみまくって感想を書きます。

身近にいる嫌な奴を容易くお気軽に地獄送り。『地獄少女』はいじめられっこの味方!

f:id:mogmog-devon:20191116155621j:plain

 

アクセスして名前を入力するだけで、その人間を地獄に送るインターネットサイト【地獄通信】

そんな、何のヒネリもないそのまんまな名称のサイトの管理人の名は、これまた「閻魔あい」というそのまんまな名前の少女であった。

いや別に無理にヒネった名前を付ける必要はないが、そのサイトが「午前0時ちょうどにのみアクセス可能である」という設定も小学生が考えたみたいに安直で逆に不気味だ。

しかもそんなウワサが普通に一般の高校とかで広まっているのも凄い認知度。

闇サイト感ゼロの超ポピュラーな復讐サイトとして市民権を得ているといっても差し支えないであろう。

当然のように、いじめられっこなんかが恨みにかられて気軽にアクセスし、気軽にいじめっこを地獄送りにしたりする。

 

なんという気軽さ。

 

近所のコンビニにでも立ち寄るような気軽さで復讐ができてしまう【地獄通信】、学校や職場で孤立しがち、いじめや悪意のターゲットにされがちなそこの君におすすめだ。

 

とはいえ、安直に依頼可能なぶん、復讐にはそれなりの代償が必要。

それが、≪復讐した者は自らも死んだら地獄に落ちること≫という契約ルールなのである。

ターゲットは即座に地獄へと送られる、しかし、自分もいつか死んだときに地獄少女によって地獄に送られることになる。

つまり死後の自分を代償とする契約なのだ。

嫌な奴が死ねば、とりあえず現状は安泰になるし、自分も寿命で死ぬまでは地獄行きを待ってもらえる。

だったら、なんとなく復讐してもいいかなって気持ちになってもおかしくはない。

いじめなどで死にたいぐらい追い詰められていたらなおさらそう思うはずだ。

気軽に復讐できるシステムは整っているが、それを決意し実行するには覚悟がいるという、シンプルゆえに人間の心の葛藤が伝わりやすい設定になっているのがこの作品の面白さだ。

 

 

玉城ティナの常人ならざる存在感

f:id:mogmog-devon:20191116155824j:plain

 

依頼があればその日のうちに仕事に取り掛かるストイックな地獄少女閻魔あいちゃんを演じるのは、青春映画の名作と名高い『惡の華』でも地獄の使者みたいな女の子を演じた玉城ティナ嬢である。

最近はキャラ重視の独特な役柄ばかり演じているようなイメージの彼女は、モデル出身とは思えないほど異形の存在感が際立っている。

「いっぺん、死んでみる?」というお馴染みの決めゼリフ(「“殺し”文句」なんてダジャレは恥ずかしくて書けない)も、普通に言われたら笑ってしまいそうであるが、クソムシでも見るような蔑んだ目のティナ嬢に言われると問答無用で心臓が止まりそうだ。

 

しかしこの映画、そんな地獄生まれ地獄育ちのティナ嬢が主役かと思わせて、実はまったく違う。

人気アニメの映画化ということで、当然のようにそんなものは未見な俺は、鑑賞前までこの映画を、閻魔あいちゃんが「地獄少女」であるという正体を隠して学園生活を送り、人知れず事件を【地獄送り】で解決していくような作品だと勝手に想像していた。

復讐版『名探偵コナン』、もしくは女子高生版『必殺仕事人』みたいなやつかと思ったけどぜんぜん違った。

 

なんと閻魔あいちゃんは、依頼者が【地獄通信】にアクセスしたときとターゲットを呪い殺す際にしか出てこない(アニメ見ている人には常識なんだろうけど)。

この映画の主人公は、恨みと悲しみに囚われた女子高生たちなのである。

日常生活で起きる理不尽で無慈悲な出来事に翻弄される善良な女の子たちが、少しづつ闇へと落ちていく過程がスリリングかつ丁寧に描かれ、ついに禁断の「復讐」へと導かれる。

そのとき初めて、地獄とこの世を繋ぐ存在として着物姿の美しき地獄少女ティナ嬢が現れるのだ。

14歳で『ViVi』の最年少専属モデルに選ばれたというその容姿は、まさに地獄のような美しさ。というかエロさ。

そう、ティナ嬢の凄さは、そこに「妖艶さ」が漂っているところ。

その妖しい魅力と神々しさを併せ持つティナ嬢の姿そのものが、絶望した依頼者の覚悟を受け入れる存在としての説得力となっているのだ。

 

 

完璧なるキャラクター創造は白石監督ならでは

f:id:mogmog-devon:20191116160108j:plain


監督の白石晃士と言えば、Jホラー最後の傑作と謳われた『貞子VS伽椰子』でも見せたキャラクターの描き方の巧さが特徴だ。

とにかく登場人物に魅力があり、だからこそドラマ展開に違和感がなく感情移入しやすい。

主人公ともいうべきドラマの中心的存在の女子高生役の森七菜ちゃんが超絶カワイイが、最初は主体性のない地味で素朴な女の子なのに、物語が進むにしたがってどんどん強さや行動力を見せてくれる。

その友人のミステリアスで硬派な女の子役の仁村紗和、スターになる素質十分だが夢破れるアイドル役の大場美奈、そして地獄少女の存在の謎を追うフリーのルポライター役の波岡一喜

どのキャラクターも、一筋縄ではいかない複雑さと人間的魅力に溢れた存在としてドラマを盛り上げてくれる。

 

ちなみに、波岡演じるルポライターの役名は「工藤仁」といい、白石監督のホラーシリーズ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』における名物ディレクター「工藤仁」と同姓同名。

“怪奇の謎を探るためには危険にも飛び込む”という危ない性格をも受け継いだ形で登場するのでファン必見である。

 

まとめ

地獄少女』は映画版のオリジナルストーリーだが、これがかなり練られていて青春映画としても非常に面白い。

さらに女の子同士の友情物語であり、カルト集団を描いたオカルトサスペンスでもあり、原作アニメのファンタジー感をベースにしつつ、さまざまな面白さがバランスよく機能しているのは監督の実力のなせる業であろう。

 

ただひとつ、アニメを知らない人間から言わせてもらうと、閻魔あいちゃんと登場する3人の仲間のオバケがどうも必要性がわからなかった。

ただ脅かし要員としてそのへんにいるだけなんだけど、麿赤兒や橋本マナミ、楽駆と、妙に派手なビジュアルの面々なので賑やかし感が凄くてドラマとしては興冷めしてしまいがち。

わざわざアニメに寄せた部分なんだろうけど、原作ファンにとってはアリなのかどうかが知りたいところだ。

 

 

f:id:mogmog-devon:20191116160343j:plain

つまりこっちのほうが見たい